虹ヶ咲3rdライブ直前の与太話

 「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 3rd Live! School Idol Festival ~夢の始まり~」ついに当日です。

 あまりにも状況が流動的で、もはや自分の席に座って照明が落ちて音楽が鳴り始めるまでは何も信用できないという心持ちですが。それでも、こうして無事に開催当日を迎えることが出来たわけです。

 まずは開催に向けて尽力してくださった各方面の方々に、最大級の感謝を。

 

みんなの夢を叶える場所

 虹ヶ咲の3rdライブは、図らずも「有観客で開催されること」自体がこれまでにないほど強く望まれるイベントとなりました。Aqoursつま恋は延期、Liella!のリリイベは無観客となり、いわばラブライブ!シリーズにとっての「最後に残った道しるべ」。

 私自身にもそんな気持ちが、現状に一矢報いてほしいという期待が無いわけではありません。無くはないのですが、一方で、そんなことまで背負ってほしくない、背負うべきではない、という矛盾した思いがあります。

 例えばスポーツ選手の方々なんかも、暗い世の中で俯いている私たちに「勇気や感動を与えたい」と言ってくれますけど、そんな台詞を言わせてしまっていることが釈然としないというか。「お気遣い頂きありがとうございます」という感じですが、いやいやまずは自分が楽しんでくれよと。その姿から何を受け取るかの「解釈」はこっちに任せてほしいと思うわけです。

 翻って今回の3rdライブ。後からどのように解釈されるかは置いといて、叶えた夢=「虹ヶ咲アニメ化」の先にある新しい夢=「アニメ準拠のライブ」を心から楽しんでほしい。「こんな景色が見たい」が叶う場であってほしい。キャスト・スタッフの皆さんにとっても、もちろん「あなた」にとっても。

 そのこと自体が、この”禍”に一矢報いる結果になる、という考えはあまりにナイーブでしょうか。

 

楽しみポイント

 今回、Day1は現地・Day2は配信で参加します。

 いつもはAqours 2ndの頃から連番している友人と一緒なので、行き帰りはずっとライブの話ができるのですが、今回は別々になってしまいました。そうでなくても、時節柄行き帰りの電車で談笑したり打ち上げを開催することは憚られます。

 なかなか「これが楽しみ!」という話を共有できず、非常にもどかしいので、ここで楽しみポイントを吐き出しておきたいと思います。

 

①アニメ再現の演出

 虹ヶ咲の先輩であるAqoursのライブでは、アニメ準拠の構成は見慣れたもの、というかAqoursの活動を経て「アニメ準拠のライブ」という形式が成立したと言えます。該当するのは1st、3rd、アジアツアー、それから5thです。

 過去の構成からある程度パターンは想像できます。1曲目はアニメのOPで、続けて全体曲を1-2曲やって挨拶。挿入歌の前にはアニメ映像を入れて盛り上げる。間にユニット曲なんかを挟みつつ、最後に派手な全体曲をやって退場。アンコールはアニメのEDと13話挿入歌。誰もが予想する、アニメを追体験できる安定の構成です。

 しかしながら、虹ヶ咲のアニメは挿入歌の位置という観点から考えると、これまでのラブライブ!のアニメと大きく異なります。

 サンシャインの場合、Aqoursメンバーが歌う挿入歌の初出は以下の通りです。挿入歌が入る回の間は大体2~3話空く感じです。

  1期)1話、3話、6話、9話、11話、13話

  2期)3話、6話、7話、9話、12話、13話

 一方の虹ヶ咲アニメ(アニガサキ)では、1~9話まで毎回挿入歌があり、2話飛んで12話と13話にも挿入歌が入ります。そもそも曲の数が倍近く、そのうえ1つ1つの曲に至る明確なエピソードが存在します。

 ゆえに、挿入歌1曲ずつに対して映像を挟んだ場合、ライブとしてはかなりテンポが悪くなるのでは?という懸念があります。流れを考えると、映像の使用はポイントを押さえたものにならざるを得ないはずです。フィルムコンサート形式もそれはそれで見たいですけどね。両方やってくれ。

 そこで演出のキーになるのが【応援出演】矢野妃菜喜(高咲 侑役)でしょう。現時点では矢野妃菜喜さんが会場にいること以外何も分かりませんが、何らかの形で演出に組み込まれていると思われます。

 例えば、「Dream with You」「Awakening Promise」に至る流れを大西亜玖璃さんと2人で再現するとか。各ソロ曲の前後に侑からのコメントが入るとか。

 逆に「ステージに一切立たない」というのもアリ。その場合、9人が「夢がここからはじまるよ」の口上を再現してくれた時にすさまじい説得力が生まれます。「あなたが私を支えてくれたように、あなたには私がいる」 でも「NEO SKY, NEO MAP!」で傘持って登場するくらいはお願いしたいです。見たい、見たいんだ。

 映像で見たいのは「VIVID WORLD」に至る流れ。11話を流して 「Awakening Promise」に至るのも、中だるみの恐れがあるけどカタルシスがすごそう。

 13話の小芝居が入ったらびっくりですけど、ベネチアンマスクを装着した前田佳織里さんが見たくないと言ったらウソになります。

 

②アニメ再現のステージ

 ステージの装飾はおそらく13話仕様になるはずですが、アニメの再現を目指すとき、「階段」と「ステージ2階」が必要になります。

 両方使うのが歩夢の「Dream with You」「Awakening Promise」ですね。1話と12話で使用されたキャナルコートの階段。歩夢にとって大切な始まりの場所ですし、階段を駆け上がるところから見たいです。

 ちなみに「Awakening Promise」のサビ前は、階段を思いきり駆け上がる感じだと思っています。振付が、ではなく概念として。

 ステージ2階から歌ってほしいのは「Poppin' Up!」「DIVE!」の2曲です。かすみは台によじ登って歌い始めますし、せつ菜も高所から圧倒的なパフォーマンスで魅せるイメージ。キャラクター的にも高いところがよく似合います。(バカというわけではなく…)

 「夢がここからはじまるよ」ではステージに大きな虹が架かるはず。

  余談ですが、劇中で自然現象としての虹を頑なに出さなかったことにはちゃんと意味があると思ってます。人間の力で架けるものであり、胸の中に架かるものであるという…後半はDA PUMPですが。

 

③曲に乗せる文脈~せつ菜と歩夢

 アニメ準拠のライブですから、当然文脈を踏まえた表現をしてくるはずで、その点はラブライブ!を信頼しきっています。なかでも注目したいのはせつ菜と歩夢です。

 

 まずせつ菜について。要は「CHASE!」を披露してほしいという話です。

  この曲は校内マッチングフェスティバルに始まり、1st、2nd、それからシャッフルフェスと、毎回披露されており、これらのライブを見てきた方ならすっかり慣れ親しんだものだと思います。

 しかしながら、1話で描かれた「CHASE!」のパフォーマンスには、これまでとは全く異なる文脈が乗っています。

   これまでの文脈というのは、スクスタから読み取れるせつ菜の話ですね。「大好き」を押し殺してきた日々から抜け出し「なりたい自分を我慢しないでいいよ」と歌う。誰もが「大好き」を叫ぶことのできる世界を作る、革命のはじまりの歌です。

   一方のアニメ1話。アニメ時空において、この曲がいつ・どのように作られたのかは描かれません。大事なのは歌われたシチュエーションです。

   自分が「大好き」を貫いたことが、自分の我儘が、同好会の崩壊を招いてしまった。絶望した彼女は、自らに対するケジメとして、1話のステージを最後にスクールアイドルから身を引く決心をします。

   そして、自分以外の誰かが再び同好会を立ち上げる未来を願います。「夢は『いつか』ほら輝き出すんだ」

   1話のステージには、せつ菜の悔悟と、そして一縷の希望がこめられています。そんな彼女の感情を、せつ菜に寄り添い続けてきた楠木ともりさんが無視するはずもなく。必ず表現してくれると信じています。私たちは見たことのない「CHASE!」を目の当たりにすることでしょう。

 

 歩夢については、ソロ曲「Dream with You」「Awakening Promise」の2曲は確定しています。注目したいのはこの2曲で「どう表現を変えてくるか」です。

   言うまでもなく、前者はスクールアイドルとして一歩踏み出した歩夢、後者は同好会の活動を経て成長を遂げた歩夢です。

   これまでのライブでは、大西亜玖璃さんの成長と歩夢の成長をある種重ね合わせることが出来ましたが、今回はひとつのライブの中で成長を表現するという、非常に難しい課題が与えられています。

   虹ヶ咲としての活動も気付けばずいぶん長くなり、ますます座長としての貫禄が出てきた彼女。2種類の歩夢をどう表現してくれるのでしょうか。非常に楽しみです。

  

④無敵級*ビリーバー

 これは披露されるか分かりませんが…無敵級のPVはアニメと地続きの世界観、ということでお願いしたいところ。お願いしますよ運営様。

 2ndのリベンジに期待するのもそうなんですが、我々はまだ観客がいる状態での「無敵級・笑顔のキラキラかすみん」を目の当たりにしていないわけですよ。

  ライブパフォーマンスは観客がいてこそ完成するものですが、特にかすみはその傾向が強い子です。是非とも完全体スーパーかすみんを見せてほしい。

 見たい、見たいんだ。

 

最後に〜私たちが出来ること

 作中の高校生たちはステージづくりや企画立案という形でライブに関わることが出来ましたが、現実の私たちは「制作側」に回ることはありません。

  ただし、こと今回に関しては、現地で参加する場合、客席側にもイベントの成否に関わる重要な役割が与えられています。言うまでもなく感染症対策ですね。ガイドラインには改めて目を通しましょう。

ラブライブ!シリーズ ライブイベントご来場のお客様へご協力のお願いと開催方針について

 また、5月8日~9日の埼玉は夏日が予想されるとのこと。熱中症対策も必要です。夏のメットライフドームを経験してきた各位には説明するまでもありませんが、兎にも角にも水分補給。

  つまるところ、「怪我をしない・させない」「愛と思いやり」の精神です。そのうえで、1人ひとりがそれぞれの形で最大限楽しめることがいちばん。

 

 さて、そろそろ会場に到着します。

  あの虹の先で、奇跡が待っています。楽しみましょう。

虹ヶ咲アニメ 「夢」にも色々あるから

 あまりに衝撃の大きい11話でした。『ラブライブ!』シリーズにおいて少女たちのすれ違いが描かれることは幾度もありましたが、複数話を使ってここまで二者関係にスポットを当てることは無かったはずです。また、脚本はもとより表情の見せ方や暗喩の使い方といった演出にも『やがて君になる』等の近年の百合アニメの文法が見て取れました。

 思えば「ラブライブ!」の無印1期が放送された当時は「カップリングが9C2通りできてすごい!」と無邪気に喜んでいた私ですが、今回「天下の『ラブライブ!』シリーズでここまでストレートにやるのか…」という驚きは非常に大きく、今週は色々手につかないまま「解決編」(になってほしい)12話の放送日を迎えてしまいました。

 本当は12話を受け止めるにあたって色々な観点から整理しておきたかったのですが、あまりに論点が多くて手が回らなかったので、ゆうぽむの夢のかたちの違いに絞って整理を試みました。

 

 2人のスタート地点は1話で見たせつ菜のライブでした。せつ菜のライブを見て「すっごくときめいちゃった」侑は、深夜まで動画を漁って寝不足になってしまうほどスクールアイドルにのめりこみ、翌日すぐ同好会の部室を探すという積極的な行動に出ます。1話終盤には、歩夢の方もスクールアイドルに興味を持っていたことが明らかになり、挿入歌「Dream with You」を歌って夢への一歩を踏み出します。

 ふたりで…ふたりで始めようよ、侑ちゃん! 私も見てたの…動画。スクールアイドルの。せつ菜さんのだけじゃなくて、たくさん。本当にすごいと思ったよ、自分の気持ちをあんなにまっすぐ伝えられるなんて。スクールアイドルって本当にすごい! 私もあんなふうにできたら、なんて素敵だろうって!

(中略)

 私、好きなの! ピンクとか可愛い服だって、今でも大好きだし着てみたいって思う! 自分に素直になりたい。だから見ててほしい。私は、スクールアイドルやってみたい!

 スクスタでの、「あなた」に誘われてスクールアイドルを始めた歩夢と違い、能動的に侑の手を引く歩夢の力強さに感動を覚えたものです。この時は。ここで語られている歩夢のビジョンは、スクールアイドル活動を通じて自分の気持ちを素直に表現できる人間になることです。これを歩夢の動機(1)としましょう。

 次に、上に引用した会話から少し時間を巻き戻すと、最後にスクールアイドルの話をしたとき、侑はせつ菜を探すことを諦め、こう呟いています。

 やっぱり難しいのかな…夢、追いかけるのって。(中略)自分の夢はまだ、無いけどさ。夢を追いかけてる人を応援できたら、私も何かが始まる…そんな気がしたんだけどな

 歩夢が侑に「スクールアイドルやってみたい!」と伝えたのは、上記発言を受けてのものであり、歩夢がスクールアイドルを始めることは、侑の言う「夢を追いかけてる人を応援」したいという気持ちを叶えることになります。これが歩夢の動機(2)です。2話でのかすみとの会話で、侑の「マネージャー志望なんだ、歩夢を応援したくて」という発言に歩夢は笑顔で応じており、「夢を追いかけてる人を応援」できていることを素直に喜ぶ気持ちが表れているように思います。

 最後の、そして最大の動機は「侑と一緒にいられること」です。もともと侑と歩夢は2年生になったら予備校に通うつもりでした。1話を見る限り、ふたりは放課後にいつも一緒に遊んでいるようですが、予備校に通い始めたら当然今までよりも一緒にいられる時間は少なくなりますし、ふたりで部活に参加した方が一緒にいる時間は長く取れます*1。10話での「ふたりで予備校に行くはずだったけど、こうして一緒にいる」という発言からも、一緒の時間が維持されていることへの嬉しさが窺えます。極めつけは次の台詞です。

 私の夢を一緒に見てくれる?

 もちろん!いつだって私は歩夢の隣にいるよ

 この侑の言葉が無ければ、歩夢がスクールアイドルを始めることは無かったでしょう。簡潔にまとめると、歩夢がスクールアイドルを始めた動機は以下の3点に集約されます。

 

(1)自分のやりたいことを叶えられる
(2)侑のやりたいことを叶えられる
(3)侑と一緒にいられる


 言葉に表れていたのは(1)だけですが、上記(1)~(3)をひっくるめて叶えることが歩夢にとっての「夢」であると考えられます。侑と一緒に活動し、侑に応援してもらいながら一歩一歩成長できる「状態」こそ、歩夢が思い描いていた「夢」だったのでしょう。そう考えると、スクールアイドルになった時点で、ある程度夢は叶ってしまったと言えましょう*2

 歩夢の認識としては1話の「もちろん!いつだって私は歩夢の隣にいるよ」は自分と同じ「夢」を見てくれることへの肯定と捉えており、3話の「せつ菜ちゃんは私たちに夢をくれた人だもんね」という発言からも、ふたりの「夢」は同じものであるという前提に立っています。

 しかしながら、侑は10話Aパート時点で自分の「夢」(せつ菜の言う「大好き」)を見つけていないと自覚しています。侑の「夢」が花開いたのは10話Bパート、同好会の活動を経て生まれた「スクールアイドルフェスティバルの実現」という夢は、他校のスクールアイドルを巻き込みながら大きく動き出します。侑の視線は、「夢を追いかけてる人を応援できたら、私も何かが始まる…そんな気がしたんだけどな」の「何か」、歩夢を応援した先にある「何か」に向き始めました。

 現在・過去・未来、ずっと一緒だと思っていた侑との認識のギャップに気づいたとき、歩夢が受けた衝撃は計り知れません。一緒に部活をしている「今」をふたりで追いかける「夢」と定義している歩夢にとって、侑の変化は受け入れがたいものに映ったはずです。侑の思い描く「夢」の中には歩夢の居場所もあるはずですが、それに気づけるほどの余裕は今の彼女には無さそうです。

 

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 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会は、方向性がバラバラな子たちがバラバラなまま各自の個性を生かすことのできる場所であり、「夢」のかたちが違うのはある意味当然です。このあたりメインテーマと絡めて解決してくれるんじゃないかな…と期待していますが、ゆうぽむの関係性には、「夢」のかたちの違いというだけでなく、自信のなさや独占欲という問題もかかわってくるので一筋縄ではいかなそうです。13話に持ち越しになってしまったら(なってほしくありませんが)次の1週間はそのあたりについて頭を悩ませることになりますかね。

 さて、今週も正座待機しましょう。

*1:もちろん移動時間は一緒だったでしょうね。御茶ノ水駿台だとしたらお台場から片道3-40分でしょうか。

*2:「自分に素直になりたい」は性格上なかなか実現しないものの…皮肉にも11話ラストで実現してしまうことになります。

虹ヶ咲アニメ1話 桜坂しずくと『女生徒』について

 TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』が始まりました。第1話では侑と歩夢がメインで描かれましたが、筆者が推してやまない桜坂しずくの描写について備忘のためまとめておきたいと思います。

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 第1話の本編で桜坂しずくが登場するのは、学校の屋上。何やら演技の練習をしているようです。直後に先輩らしき人から「これからは演劇部に専念できるんでしょ?」と声を掛けられていることから、これは演劇部の活動なのだと判断できます。ダサジャージ可愛いですよね…

明日もまた、同じ日が来るのだろう。幸福は一生、来ないのだ。けれども、

 これは、太宰治の小説『女生徒』*1の終わり近くの文章です。『女生徒』は全編にわたって少女の独白という形式をとる小説なので、演技というより朗読の練習と言った方が良いかもしれません。わずか25秒ほどの場面です。

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散々な世界を、それでも。 〜An seule étoile ~Rythme d’été~感想

わりと勢いで書いたのに投稿してなかった感想記事です。

伊波杏樹さんの個人イベントは初参加でしたが、神戸まで遠征して本当に良かったと思えるライブでした。

 

伊波さんの個人活動を追い始めたのは昨年後半頃から。まだまだニワカもいいとこです。Aqoursのライブで見せる全身を使った表現力の豊かさに魅せられた私は、これまで彼女が出演する舞台を追ってきました。昨年末の『アンチイズム』以降は何だかんだどの公演にも一度は足を運んでいます。

そこで見る彼女の姿は、当然ながら「役」として九条奈々やメーテルといった他者の人生を生きる伊波さんでした。だからこそ、個人イベントで楽しみにしていたのは、「伊波杏樹役・伊波杏樹」がどんな表現をするのか、どんな言葉を語るのか、という点です。「自分のことが好きではなくて、だからこそ“役”として他者の人生を生きることに喜びを見出した」と(うろ覚えですが)言っていた彼女は、どんな表現をするんだろう。歌を通してどんな想いをぶつけてくるんだろう。そんな期待の中で、舞台の幕が上がりました。

 

開演してからはあっという間に時間が過ぎ、気付けば休憩時間になっていました。いや、オタク特有の盛った言い回しだとお思いでしょうが本当なんですってこれが…。

1曲め『亜麻色の髪の乙女』の歌い出しからしっとりとした雰囲気に引き込まれて。

『ラムのラブソング』では致死量の可愛さを摂取し危うく意識が飛びかけて。

本家よりキレッキレに踊る『フライングゲット』に圧倒されて。

他にもたくさんたくさん。もう色々ありすぎて。

 

とにかく、曲ごとのキャラクターの振れ幅があまりにも大きいんです。NamiotOの試聴動画を見た時から感じていたことではありますが、実際に会場で目の当たりにするのとでは全然違いました。役者としての彼女の表現力の幅広さについては知っている積もりでいましたが、まさか歌でもここまでやってくるとは…。また新たな一面を知ることができました。

アンエトの選曲は伊波さん自身が行っているので、歌詞のメッセージは彼女自身が伝えたいことであり、曲ごとのキャラクターは全て彼女の一部なのだと思っています。従って、今回の歌での表現は「役を演じる」のとはややニュアンスが異なり、内側から湧き出るものを演技力によって適切に出力している感じでしょうか。伊波さんは割と「憑依型」なので、前者と後者は綺麗に分けられるものではないと思いますが…いずれにせよ、感情を出力する高い技術に支えられたパフォーマンスですので、役者としての面目躍如と言えましょう。

 

後半は初っ端『丸の内サディスティック』からA.Saxを演奏する伊波さんに驚かされました。実際「私の年収、低すぎ…?」のポーズで固まりましたからね。ラジオで「楽譜はまだ読めないけど運指と音だけ覚えて吹いた」と言っていた通りシンプルなフレーズだけなんですが、音色が楽曲にガッチリ嵌っており格好よさの極致でした。楽器始めたての段階でああいう「合奏の楽しさ」を感じられるのは素晴らしいことです。半年後とかにはめちゃくちゃ上達してそうで楽しみ。

一方で、伊波さんほど多忙な毎日を送っている人が新しいことに挑戦しているのだから、自分が色々「あれやりたい」「これやりたい」と思いつつも手を付けないでいるのは怠慢だよなあ…と思ったりもしました。出来るかどうかよりやりたいかどうか、なんですよね…。

 

そしてMCでは、色んな想いを語ってくれました。まずはミュージカル出演決定の話。情報解禁当時、私も大喜びで涙ぐみながら限界リプライを送った1人なんですが、本人の口から改めて喜びと決意を聞くことが出来てまた泣きそうになりました。

さらに「新しい夢」として「武道館に立つ」ことを宣言。遥か彼方の夢に向かって真っ直ぐ手を伸ばす彼女の姿は何よりも美しくて…まったく、そんなこと言われたらまだまだ付いて行かなきゃいけないじゃん。仕方ないな。

 

「歌を通してみんなを応援したい」という話もありました。文面だけだと月並みにも程がある言葉ですね。歌い手は多かれ少なかれ似たようなことを言っていますから。しかし、伊波さんの生き様を見てきた私たちにとっては、その言葉は明確なメッセージとなって胸に迫ってきます。夢を諦めるんじゃない、って。

「この中に夢を諦めようとしてる人がいたら、私が絶対そんなことさせない!」「私が給水所に立って待ってるから!」物凄く力強い言葉ですが、夢に向かう足取りが現実という壁に阻まれた時のしんどさを誰より知っている人だからこそ出てくる言葉なんですよね。

その想いは、En.前ラストに歌った『ラフ・メイカー』で明快に表現されていました。この世界では苦しいこと悲しいことが沢山あるけれど、そんな時こそ私の歌を聴いて笑ってくれ! ラフ・メイカーを“演じる”彼女の姿からは、夢を見つける為の一歩を、夢を叶える為の一歩を、強く強く後押ししようとする生き様がビシバシ伝わってきて。歌が好き、という気持ちだけでやってきた身長158cmの女の子がこんなに大きな存在になっている、という事実に感じ入りました。

 

いやあ、ほんと、爽やかな気持ちで神戸文化ホールを後にすることができましたね。

今の仕事に就くのが夢だった訳じゃないけど、よりよく生きる為に仕事頑張ろうと思いました。

夢と言えるほど大層な物じゃないかも知れないけれど、やりたい事やっていこうと思いました。

すげえな伊波杏樹

 

実は開演前、仕事関係の嫌なメールが入ってて若干憂鬱になっていたんですよ。返信内容を考えるのも億劫でしたがそれ以上に「うわー神戸まで来てこんな事考えなきゃいけないのか…」って。

でも伊波さんの歌を聞いて、言葉を聞いて。状況は何も変わっていないのに、やってやるぜという気持ちが湧いてきて。帰りの電車の中でババっとメール返しました。どうだ!やってやったぞ!って。単純すぎて自分でも笑っちゃうくらいです。

 

あと、目標が1つできました。バンドやりたいです。前々から「やってみたいなー」とぼんやり思っていたのですが、今回の生演奏を見てやっぱバンドいいなと思ったので。

私はクラシック音楽界隈の人間でTubとEuphくらいしか吹けないので…まずはそこですね。LLBSとかで編成的に出られるセッションを探しつつ、身内にSaxやGtを教えてもらおうと思います。

 

散々な世界ですけど。

人生を、やっていきましょう。

 

 

以下セトリのメモ。刺さった曲はiTunesで買っていきます。

 

M1. 亜麻色の髪の乙女 / 島谷ひとみ
M2. 君に届け / flumpool
M3. 夏祭り / JITTERIN'JINN
M4. ラムのラブソング / 「うる星やつらのテーマ」
M5. フライングゲット / AKB48
M6. ひまわりの約束 / 秦基博
M7. 未来予想図II / DREAMS COME TRUE
M8. 丸の内サディスティック / 椎名林檎
M9. ジッパ・ディ・ドゥーダ
M10. Bi-Li-Li Emotion / Superfly
M11. シャングリラ / チャットモンチー
M12. 死ぬこと以外はかすり傷 / コレサワ
M13. ラフ・メイカー / BUMP OF CHICKEN
EN1. もし叶うなら / 伊波杏樹
EN2. またあえる日まで / ゆず

「きっと明日も輝ける」~劇場版ラブライブサンシャインの感想というか整理

『The School Idol Movie ~ Over the Rainbow』、本当に素晴らしい映画でした。これから何かを始めようとしている人、いま何かを頑張っている人、明日も人生を続けるすべての人を応援してくれる作品でした。制作に関わった全ての方々にありがとうを伝えたいです。

花丸ちゃんかわいい!とか沼津の空気感がすごく出てる!とか喋りたいポイントは沢山あるんですけど、まずは本筋を整理して次からの鑑賞に備えたいと思います。

 

 

 

「いままでやってきたことは、全部残ってる。何ひとつ、消えたりしない」予告編で千歌が言うセリフですが、この映画のメッセージをあまりにも端的に表現しています。ひとつの物語が終わり、また新しい道に進むとき。またゼロから始まるように感じるけれど、そうじゃない。今までやってきた全てがここにあるんだから、ゼロなんかじゃない。もうゼロじゃなくてイチなんだよ……と。これは2期13話で言っていたこととリンクします。

 

曜「全部、無くなっちゃったね…」

果南「そんなことないよ。ずっと残っていく。これからも」

 

ダイヤ「今日この日、浦の星女学院は、その長い歴史に幕を閉じることになりました。でも、わたくしたちの心に、この学校の景色はずっと残っていきます」

 

3年生は卒業してしまうし、学校は無くなってしまう。それでも消えずに残っていくってどういうこと? 2期完結後にリリースされた楽曲を聞いたり、4thライブに足を運んだりした方であれば、その答えはなんとなく見えていると思います。いままで積み重ねてきた全てが、新しい始まりの糧になることを感じていると思います。ですが、そのことはTVアニメ本編では明示されません。だって、まだ彼女たちは「新しい場所」へ踏み出していませんでしたから。

劇場版で再スタートを切った新生Aqoursの6人は、様々な困難に立ち向かう中で「スタートはゼロじゃない」ことに気付きます。いままで歩んできた全ては“私”の一部になっていて、新しい道に駆け出す“私”を後押ししてくれる。だからこそ千歌は、笑顔で浦の星の校門を閉じます。

過去の経験って、新しい何かを始めたときに初めて「そこにある」ことに気付かされるんですよね。もしかしたら、「ゼロからのスタート」だと感じていた当初だって、本当はゼロじゃなかったのかもしれません。でもそれは、一歩目を踏み出さなければわからなかったことです。これって(冒頭でも書きましたが)、これから何かを始めようとしている人、いま何かを頑張っている人へのエールなんですよ。夢が叶っても叶わなくても、明日は来るし人生は続くので、次の一歩を踏み出さなきゃいけない。そんな時に背中を押してくれるのが、「いままでやってきたこと全部」なんです。

 9人が紡いだ奇跡と軌跡の虹を越えて、イチからその先へ。完璧なまとめ方でした。

 

 

上記の結論を出す過程には、大きく3つの問題解決ストーリーがあります。3年生卒業後のAqoursが「新しい(6人の)Aqoursの形」を探し求めるのが物語の軸ですが、

①浦の星統合問題

②鞠莉の縁談問題

③理亞のアイドル活動再開問題

以上3つの問題が起こり、②③に取り組む中で新しい始まりへの不安が解消されて、①の解決に繋がる形です。

 

①浦の星統合問題では、元浦の星の生徒たちの部活への真剣さを、統合先の高校(の父兄)に示す必要がありました。そのために新生Aqoursはライブを行い、「自分たちは真剣にスクールアイドルに取り組んでいる・人を感動させられる」ことを示します。1期2期を通して、Aqoursメンバーとそれを支える他の生徒たちが積み重ねてきたことを思えば、そんなのは造作もないことです。ただ自分たちの中にあるものに気付いていなかっただけ。

 

②鞠莉の縁談問題では、母親に対して「スクールアイドルは下らなくなんかない」ことを証明するためにライブを行います。①と同様に「人を感動させられること」を示すことで解決していますが、大事なのはそのあとの母娘の会話。鞠莉は、ここまでスクールアイドルとして歩んできたことは“私”の一部であり、それは育ててくれた親にも並ぶものだと言います。つまり、過去の瞬間の連なりがイマの“私”を形作る…鞠莉はこのことに気付いていました。そしてそれは、側で見ていた千歌たちにも伝わっていたことでしょう。

 

③理亞のアイドル活動再開問題はこれだけで1記事書けるレベルなので深追いしません。理亞も残されたAqoursメンバーと同様、姉の不在から来る不安感・焦燥感に囚われていました。さらに理亞の場合は、自分が姉の夢を壊してしまったという罪悪感もあるので余計に拗らせており、Saint Snowの影を追いかけるばかり身動きが取れなくなっています。

そんな理亞に聖良が告げるのは、「Saint  Snowとして活動してきたことは、ずっと残っている。だから追いかける必要なんて無い」ということ。その言葉を受け止めた理亞は、Saint Snowの経験を糧に自分色の新しい輝きを見つけることでしょう。重要なのは、これを後押ししたのがAqoursメンバー(主にルビィ)ということですね。この時点で彼女たちはもう答えに辿り着いているんです。

 

 

今回はとりあえずこのへんで。他にも「受け継がれるもの」がテーマになっていると思いますし、雨と虹の使われ方も考え甲斐があります。まだ3回しか見てないので、これからたくさん見るぞー

叶った願いはいくつある?~Aqours 4thライブ1日目感想

まだ文脈を追い切れていないし内容も体裁も全然まとまっていないけれど、他の人の感想を読む前に自分が感じたものを書き出しておきたいと思ったのでばばっと書きました。劇伴まで書く余裕は無かったのでそれは後程。

3rdライブが、Aqoursラブライブ!に優勝し自分たちだけの輝きを捕まえる(アニメの)ストーリーを辿る構成だったのに対し、4thライブは東京ドームという大きな夢を叶える(現実の)ストーリーを辿る構成でした。ニコ生で高槻かなこさんが「予習として1stシングルからAqoursのストーリーを振り返っても良いかも」的な発言をしていた覚えがあるのですが、あれは布石だったんですね。

 

〇開演前

会場に入ったとき、まず目を引いたのがアリーナ後方に設置されたオーケストラのセッティング。劇伴オタクかつオケ経験のある友人と私は「えっ、これ生演奏入るの?」と初っ端からテンションが爆上がりして、近くまでセッティングを見に行きました。「楽譜置いてあるぞ!」「オペラグラスでタイトルが見えるんじゃないか?」「見える…見えるぞ、メインテーマだ!」と、いきなり興奮状態に。セトリ1曲目を最速で知ることが出来た瞬間でした。さっそく「びっくりなプレゼント」すぎます。

オケの奏者の方々が入場し、チューニングを始めると5万人の大歓声が。チューニングしただけで大歓声浴びるってなかなか無い経験なんじゃないだろうか…。そして指揮者はサンシャイン楽曲の父・加藤達也さん!思わず「加藤さーん!」と叫んでいました。いや、劇伴オタクには神様のような存在なんですって本当に。そんなこんなでメインテーマの演奏が始まり、新たな伝説の幕が上がります。

 

君のこころは輝いてるかい?

一発目これが来る気はしていましたが、さっそくボロボロ泣いてしまいました。先が思いやられます。

かつてμ'sが「いまが最高!」と歌ったこの舞台に、Aqoursの夢が生まれたこの舞台に、彼女たちは「いま」立っていて、あの時「変えてみたくなったみらい」の中にいるんだ。そう考えたらもう、Aqoursを知って応援し始めてからの日々のすべてが胸に去来して限界になりました。

パフォーマンスはもう何も言うことないです。前日にメルパルクの映像を見たばかりだったのでその印象が残っていましたが、それに比べたら気持ち悪いくらい動きが揃っていました。何度も何度も披露してきたこの曲。出だしを成功させて調子を整えるには最適だったよね、という話を友人としていました、

 

〇Step! ZERO to ONE

一発目で泣かされてからのゼロワン。もう涙でステージが見えなくなりました。メルパルクから比べたら上手くなってるのは当然なんだけど、当時サビ終わりで息切れして音が伸びなくなっていた箇所がしっかり伸ばせていたことに感極まってしまった。もうダメですね、何を見ても泣く状態でした。

1stのアンコールでゼロワンを歌ったときは「変われそうで変われないときだって感じてるから」「ゼロからイチの扉を開けよう」という歌詞が彼女たちの当時の状況とマッチしていましたが、東京ドームまで来たいま歌うゼロワンは、「あの時はこんな気持ちだったよね」と昔を振り返り初心を再確認しているように聞こえました。Aqoursの曲は聴く時期によって文脈が全然変わってきますね…だからこそ1回1回を大事にしなければならないです本当に。この時点で「ひょっとして4thは今までのAqoursの足跡を辿る構成なんじゃないだろうか…」と思い始めました。

 

恋になりたいAQUARIUM

怒涛のごとく続いて3曲目。東京ドームでセンター曲を披露する推しを目に焼き付けようと食い入るように見つめていたので、他のことあんまり覚えてないです…。長い長い「ヨーソロード」は本当に綺麗でした。

 

〇少女以上の恋がしたい

恋つながり?でようやく少し落ち着いて聴ける曲に。Cメロでひとりひとり歌い継いでいく箇所が本当に大好きなんですが、今回もキマってましたね。斉藤朱夏さんがやたら色気のある歌い方でした(好き)。

 

青空Jumping Heart

こんな早いタイミングで青ジャン出しちゃう!?と驚きました。最初のブロックでブチ上がる曲が続き、この時点でなかなか体力を使ってしまっていたのが反省点です。2日目に活かします(無理そう)。ここまではいわば定番曲で、この先のセトリは全く予想が出来ずドキドキでした。ドキドキサンシャイン。

 

決めたよHand in Hand

この曲ね!なるほどね!と叫びました。しかも衣装は制服!ついにやってくれました。嬉しくて吐きそうでした。前にどこかで逢田梨香子さんがこの曲をもう一度やりたいと言っていた気がするのですが、ここで来ますかーなるほどねー。1stは現地行けなかったので、この曲を現地で見られて本当に良かった!最初のブロックから続いて「始まり」のワクワク感を感じる曲で、本当に1stライブを見ているような気持ちでした。

逢田さんの腕ぐるぐるする振付けが好きなので凝視していました。決まってましたね。1stの時はけっこう「必死感」のあったこの曲ですが、今回は笑顔に余裕がありました。過去に披露した曲をもう一度やるって良いですね…

 

〇Waku-Waku-Week!

始まりのワクワク感繋がりで1年生曲。元気いっぱいの1年生を表現したこの曲本当に可愛くて大好きなんですが、目を凝らして衣装が見えた瞬間凍り付きました。「えっ…『想いよひとつになれ』の衣装じゃん…ということは?ということは??」思考がグチャグチャになりブレードを持つ手が震えました。2日目もやるならもっと思い切り楽しみたいです。

 

〇G線上のシンデレラ

3年生衣装も『想いよひとつになれ』のロングスカート版で、本当にやるのかな?という疑念が確信に変わりました。いやいやマジか…と。

何気に「オーケストラで踊るダンスパーティー」「船の上でパーティー」が4thライブで実現してすごいと思いました。「やりたい」を叶えるのがラブライブ!なんだなあ。

 

想いよひとつになれ

来ましたよ本当に…メインステージに登場する逢田梨香子さんと…そしてピアノ。サクラピンク一色に染まる東京ドーム。ステージの両端に立つ伊波杏樹さん、斉藤朱夏さんと目を合わせて頷く逢田さん。東京ドームの広さを存分に活かしたこの配置は、ピアノコンクールのために東京へ出かけた梨子ちゃんとみんなの間にある物理的距離と、それでも「想いはひとつ」であることを端的に表現する完璧な構図でした。

そして歌い出し。ピアノを弾きながら歌いだす逢田さん。この時点でもう涙腺決壊です。やっと9人でこの曲を…って。ところが、逢田さんは弾くのをやめて立ち上がり、その間もピアノの音は流れ続けます。2人と視線を交わし、階段を下りていく。…ここでようやく理解しました。内浦で梨子ちゃんを信じて待っていた8人に梨子ちゃんが加わり、9人で、本当の意味で、『想いよひとつになれ』を完成させるのだと。アニメの梨子ちゃんは、結局この曲に参加することはありませんでした。1stでは、同じステージに立ってはいるものの、みんなと離れてピアノでの参加でした。だけどついに、ついに、2年もの時を経て完成形が…。もう感情グッチャグッチャです。

歌い分けはあまり変えていなかったように思いますが(2日目に確認したいところ)、もともと曜ソロのフレーズでようりこがユニゾンしていたのが印象的でした。この曲はね、ようちかでありちかりこであり、そしてようりこなんですよ…

曲が終わった後のMCで、逢田さんが「この曲をやりたかった」と言ってくれたことが何より嬉しかった。またひとつ、一緒に夢を叶えることができた。…感謝しかありません。

 

〇聖なる日の祈り

まさかクリスマス曲が来るなんて予想していませんでした。ランタン?を使った演出が幻想的で美しかったです。こういう演出は広い会場で映えますね。映像がディスク化されていなかったクリスマス曲がこれで収録確定したので、思わずガッツポーズを決めました。でも逆に言えば、このタイミングでやっておかないともうディスクに残す機会は無いのかな…なんて。

 

ジングルベルがとまらない

ロッコに乗ってアリーナ外周をまわってくれました。各自の持っている小物に個性が出ていて面白かったです(小林愛香さんがシーラカンスのぬいぐるみを持っているのには笑いました)。「ジングルベルに乾杯!」がめちゃくちゃ楽しいですね。コール忘れていたので復習しておきます。

 

〇MY舞☆TONIGHT

ライブで衣装を披露していないのは『想いよひとつになれ』『MY舞TONIGHT』の2曲だったので、「この2曲はやるのかな?でも前者は…」と頭を悩ませていたのですが、前者が実現してしまったのでこちらも来るんじゃないかと構えていたらやはり来ました。遠くて細部まではよく見えなかったけれど、本当に煌びやかで艶やかな衣装です。小宮有紗さんの頭がすごいことになっていましたね。

演出面でもパワーアップ著しく、アツいステージでした。この曲はサビの振りコピが楽しいので、やってみることをお勧めします。

 

〇待ってて愛のうた

少し落ち着いて、衣装をゆっくり見ることができました。この曲もCメロの歌い継ぐところが大好きです。マイマイの衣装だと色気が5割増しになっていて、見慣れた曲なのに新鮮な感覚でした。

 

未熟DREAMER

和装繋がりで未ドリ。9人がシルエットだけになり、上から花火が出てくる演出がとても綺麗で、本当に狩野川の花火大会にいるような気持ちになりました。スポーツ報知の記事にも書いてありましたけど、いつか本当に野外でやってほしい曲です。

 

MIRAI TICKET

突然巨大な船「Aqoursシップ」が現れて笑ってしまいました。別作品ですが『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』に登場する舞台装置「約束タワーブリッジ」のような強烈なインパクトがありました。しかもアリーナを突っ切りスタンド席の近くまでやって来てくれます。またまた「びっくりなプレゼント」だなあ…

クライマックスでの定番曲ですが、2年半前、あまりにもまぶしい輝きをこの場所で見届けた彼女たちが歌う「みんなみんな悩みながらここへ辿りついたね」「これからだよ いまはもう迷わない」が、もうね。刺さる刺さる。船が出てきたときは笑ってしまったけれど、東京ドームのステージからの新たな船出を象徴しているのだと気付き、「わかりみしかねえ…」と頭を抱えました。彼女たちにとってはひとつ夢が叶った瞬間であると同時に、新たな始まりの瞬間。「これからだよ」という言葉、信じていいんですよね。

 

 〇キセキヒカル

この2曲を続けますか…そうですか…。しかもオケによる生演奏。もう歌詞そのまんまなんですが、かつて憧れた舞台の上から客席側にいた「あの頃の僕ら」に「キセキは起こると知ったよ」と語りかける構図でもう胸が一杯でした。

場所的に左舷方向から船を見る形になったので、振り付けを色んな角度から見られたのが良かったです。この曲も振りコピが楽しい上に動きの意味に気付くとたいへんエモいですよ。

 

〇Awaken the power

ここで更なるサプライズとしてSaint Snowの2人が登場します。まさか出てくれるとは思っていなかったので本当に驚きました…(佐藤日向さんが同日の『レヴュースタァライト 』のイベントに出演しないらしい、と聞いたのでもしかして…という期待はありましたが)。サビの掛け声はこの日1番の盛り上がりだったんじゃないでしょうか。3rdの時も思いましたが降幡愛さんの高音本当に良いですね。

 

〇No. 10

ついに来ました。この曲が来るってことはもう終わりか…と若干しんみりしてしまいます。スクリーンに作中の場面を「思い出のアルバム」みたいに映すのはずるいでしょ…卒業式じゃん…フォームフィンガーを一瞬だけ使ってすぐにしまったのにはちょっと笑いました。胸がいっぱいになりすぎて1日目は「10!」を言えなかったのが心残りで、2日目行けなかったら一生後悔するところでした。

 

ユメ語るよりユメ歌おう

アンコール前のラスト。やっぱり元気に締めるのはこの曲ですよね。温かい気持ちになれます。もはや歌詞を見る必要が無いので全力で歌いつつ楽しみました。

 

未来の僕らは知ってるよ

アンコール1曲目。5万人と一緒に叫ぶ「I live, I live Love Live! days!!」は最高なんだろうなと思ってましたが実際最高でした。

 

〇WONDERFUL STORIES

3rdではやらなかった、間奏での千歌ちゃんの語り。ついに見届けることが出来ました。ここまで歩んできた全てが私たちの輝きだった。4thの文脈に落とし込むと、東京ドームまでの道のり全てを肯定する言葉になりました。

 

〇Thank you, FRIENDS!!

ラスト。まず衣装の作り込みがすごかったです。イラストではレースの印象があまり無かったのですが、細かく細かく作ってあって、早く写真で見たいですね。

歌のほうでは、スクリーンに映る担当キャラクターに向かって歌う箇所が最大の泣きポイントでした。直前に高槻かなこさんの「花丸ちゃん、こんな世界を見せてくれてありがとう」があったから、今までインタビューで語っていた、9人の担当キャラクターに対するそれぞれの想いが頭に浮かんで…9人に寄り添い命を吹き込み一緒に走り続ける彼女たちだからこそ見つけた「最高の絆」がそこにはありました。

 

 

時間無くて最後駆け足になったけれど、こんな感じかな。過去にやり残しがあった曲、見たいけどやらないだろうなと思っていた曲をたくさん、この東京ドームという大舞台で見ることができて、数え切れないくらいの願いが叶いました。

さて、2日目は何が待っているんだろう。

 

 

 

シンクロする「ゼロからイチ」~1stライブ雑感

4th前に一度1stの映像を振り返っておきたいなあと思った矢先にこれですよ。

結局2日分まるまる見てしまった。もう何度見たか知れない、彼女たちの第一歩。

 

 

1stライブ以来、2nd、ファンミ、函館UC、3rdと追いかけてきましたが、この1stは以降のライブとは別種の、独特の緊張感があります。

あまりにも偉大な先代からバトンを受け継いで、初めての大舞台。私たちには想像もできないほどのプレッシャーを背負っていたことが、インタビューやラジオで何度も語られています。

私たちは1stライブ('17)から横浜アリーナという大きなステージを用意していただいて。でも、それはやっぱり手放しに喜べないというか、自分たちのがんばった成果として用意してもらえたものではないから、怖くても不安でもやらなきゃいけないっていうプレッシャーに、ずっと追われてきたんです。 -逢田梨香子(『B.L.T.』2018年9月号)

実際よくよく見ていると、ふとした瞬間に余裕ないんだろうなあって表情をしているんですよね。もちろん体力的にフルサイズのライブを歌い切るのがしんどかったというのはあると思いますが、それ以上に、尋常じゃないくらい気を張り詰めていたことが窺えます。

 

μ'sへの憧れから始まった彼女たちの旅路。目指すべき高みはあまりに遠く眩しい。世間からはどうしたってμ'sと比較する目で見られます。自分たちは受け入れてもらえるのだろうか、期待に応えられるのだろうか、という不安と恐怖。1stライブまでの1年間は本当に苦しかったと語っていたのは伊波杏樹さんです。

そうですね。やっぱり、最初はこんなに受け入れてもらえると思っていなかったから。始まって1年くらいの想いは、たぶん一生忘れられない。自分の中でも一番苦しかった時期だったんですよ。大好きな作品に関わる上で、大好きなだけじゃダメなことをすごく感じたし。-伊波杏樹(『VOICE BRODY』Vol. 2)

でも、そこにあるのは恐怖だけではありませんでした。

変わりたい、輝きたい、ゼロからイチヘ踏み出したい。心からの叫び。作中の千歌たちと同様に、彼女たち9人もまた「変われそうで変われないとき」の中にいました。1人では不安や恐怖に負けてしまいそうだとしても、巡り合った仲間と一緒なら、ゼロからイチの段差を越えられるかも知れない。いや、越えてやる。だから精一杯あがこう。そんな意志が1stのステージからは滲み出ていました。

 それを最も強く感じたのは、ライブ終盤の「MIRAI TICKET」でした。初見ではアニメ一期13話を思い出してボロボロ泣くことしか出来ませんでしたが、改めて、ああ、彼女たちは役を演じているだけではなくて、彼女たちが浦の星の少女たちそのものなんだなと気付かされました。9人の想いが作中の少女たちとシンクロしたあの瞬間は、あまりに輝いていました。

特に逢田梨香子さんの「輝きたい!」にはやられましたね…3rdのソロ曲でその表現力をいかんなく発揮した彼女ですけど、内に秘めた感情を撃ち出す力がありすぎる。

 

最近『ラブライブ!』が紹介されるときは必ず「シンクロ」という言葉が使われます。アニメとリアルのシンクロ。それは振り付け(馬跳びやバク転も含め)で「アニメと同じ動きを再現する」ことだと普通は認識されます。それだけでも十分すぎるほどすごいことをしていますが、本当にすごいのは「想い」のシンクロです。キャラクターとキャストがひとつになり、Aqoursという概念が圧倒的な実在性を伴って顕現する。キャラクターに寄り添い、同じ壁にぶち当たりながらも、一緒に走り続ける9人だからこそ達することのできる境地。そんな人類の奇跡を目の当たりに出来るのがAqoursのライブなんですよ。

 

着地点が見つからないのでこの辺で締めます。

1stは、Aqoursを取り巻く当時の環境とプレッシャー、アニメ一期で紡がれた物語、そして彼女たち自身の想いが結実した、奇跡のような一度限りのライブです。あらためてAqours好きだなあと、原点を再確認できました。このタイミングで配信に踏み切ってくれたことに感謝です。

今週末の4thライブでは、どんなシンクロを見せてくれるんだろう。