「きっと明日も輝ける」~劇場版ラブライブサンシャインの感想というか整理

『The School Idol Movie ~ Over the Rainbow』、本当に素晴らしい映画でした。これから何かを始めようとしている人、いま何かを頑張っている人、明日も人生を続けるすべての人を応援してくれる作品でした。制作に関わった全ての方々にありがとうを伝えたいです。

花丸ちゃんかわいい!とか沼津の空気感がすごく出てる!とか喋りたいポイントは沢山あるんですけど、まずは本筋を整理して次からの鑑賞に備えたいと思います。

 

 

 

「いままでやってきたことは、全部残ってる。何ひとつ、消えたりしない」予告編で千歌が言うセリフですが、この映画のメッセージをあまりにも端的に表現しています。ひとつの物語が終わり、また新しい道に進むとき。またゼロから始まるように感じるけれど、そうじゃない。今までやってきた全てがここにあるんだから、ゼロなんかじゃない。もうゼロじゃなくてイチなんだよ……と。これは2期13話で言っていたこととリンクします。

 

曜「全部、無くなっちゃったね…」

果南「そんなことないよ。ずっと残っていく。これからも」

 

ダイヤ「今日この日、浦の星女学院は、その長い歴史に幕を閉じることになりました。でも、わたくしたちの心に、この学校の景色はずっと残っていきます」

 

3年生は卒業してしまうし、学校は無くなってしまう。それでも消えずに残っていくってどういうこと? 2期完結後にリリースされた楽曲を聞いたり、4thライブに足を運んだりした方であれば、その答えはなんとなく見えていると思います。いままで積み重ねてきた全てが、新しい始まりの糧になることを感じていると思います。ですが、そのことはTVアニメ本編では明示されません。だって、まだ彼女たちは「新しい場所」へ踏み出していませんでしたから。

劇場版で再スタートを切った新生Aqoursの6人は、様々な困難に立ち向かう中で「スタートはゼロじゃない」ことに気付きます。いままで歩んできた全ては“私”の一部になっていて、新しい道に駆け出す“私”を後押ししてくれる。だからこそ千歌は、笑顔で浦の星の校門を閉じます。

過去の経験って、新しい何かを始めたときに初めて「そこにある」ことに気付かされるんですよね。もしかしたら、「ゼロからのスタート」だと感じていた当初だって、本当はゼロじゃなかったのかもしれません。でもそれは、一歩目を踏み出さなければわからなかったことです。これって(冒頭でも書きましたが)、これから何かを始めようとしている人、いま何かを頑張っている人へのエールなんですよ。夢が叶っても叶わなくても、明日は来るし人生は続くので、次の一歩を踏み出さなきゃいけない。そんな時に背中を押してくれるのが、「いままでやってきたこと全部」なんです。

 9人が紡いだ奇跡と軌跡の虹を越えて、イチからその先へ。完璧なまとめ方でした。

 

 

上記の結論を出す過程には、大きく3つの問題解決ストーリーがあります。3年生卒業後のAqoursが「新しい(6人の)Aqoursの形」を探し求めるのが物語の軸ですが、

①浦の星統合問題

②鞠莉の縁談問題

③理亞のアイドル活動再開問題

以上3つの問題が起こり、②③に取り組む中で新しい始まりへの不安が解消されて、①の解決に繋がる形です。

 

①浦の星統合問題では、元浦の星の生徒たちの部活への真剣さを、統合先の高校(の父兄)に示す必要がありました。そのために新生Aqoursはライブを行い、「自分たちは真剣にスクールアイドルに取り組んでいる・人を感動させられる」ことを示します。1期2期を通して、Aqoursメンバーとそれを支える他の生徒たちが積み重ねてきたことを思えば、そんなのは造作もないことです。ただ自分たちの中にあるものに気付いていなかっただけ。

 

②鞠莉の縁談問題では、母親に対して「スクールアイドルは下らなくなんかない」ことを証明するためにライブを行います。①と同様に「人を感動させられること」を示すことで解決していますが、大事なのはそのあとの母娘の会話。鞠莉は、ここまでスクールアイドルとして歩んできたことは“私”の一部であり、それは育ててくれた親にも並ぶものだと言います。つまり、過去の瞬間の連なりがイマの“私”を形作る…鞠莉はこのことに気付いていました。そしてそれは、側で見ていた千歌たちにも伝わっていたことでしょう。

 

③理亞のアイドル活動再開問題はこれだけで1記事書けるレベルなので深追いしません。理亞も残されたAqoursメンバーと同様、姉の不在から来る不安感・焦燥感に囚われていました。さらに理亞の場合は、自分が姉の夢を壊してしまったという罪悪感もあるので余計に拗らせており、Saint Snowの影を追いかけるばかり身動きが取れなくなっています。

そんな理亞に聖良が告げるのは、「Saint  Snowとして活動してきたことは、ずっと残っている。だから追いかける必要なんて無い」ということ。その言葉を受け止めた理亞は、Saint Snowの経験を糧に自分色の新しい輝きを見つけることでしょう。重要なのは、これを後押ししたのがAqoursメンバー(主にルビィ)ということですね。この時点で彼女たちはもう答えに辿り着いているんです。

 

 

今回はとりあえずこのへんで。他にも「受け継がれるもの」がテーマになっていると思いますし、雨と虹の使われ方も考え甲斐があります。まだ3回しか見てないので、これからたくさん見るぞー